冷徹社長が溺愛キス!?

カップを取った瞬間に気づかないとは、私の鈍さは相当なものだ。


「間違えたんだろ」


出来上がったカップを取り出しながら、社長が私を見てクククと笑う。


「……はい」


中身が変わるなんて想定外だ。


「ほれ」


社長は自分のカップを私に突き出した。


「はい?」

「ホットココアだ。交換してやる」

「えっ……でも私、口つけちゃいましたから」


恐れ多くて、大袈裟すぎるくらいに拒否する。


「奈知は病原菌でも持ってるのか」


首をブンブン横に振った。


「なら問題ないだろ」

「あっ……」


言うなり社長は、私からコーヒーの入ったカップを取り上げ、代わりにココアを持たせた。
そして、すぐさまそれを飲み干す。
私が口をつけたところを拭う間もなかった。


「飲め」


空のカップをゴミ箱へポーンと投げ入れ、社長が顎を突き出して言う。
ここまでしてもらったのに飲まないわけにはいかない。


「……ありがとうございます」


遠慮なくいただくことにしたのだった。
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