冷徹社長が溺愛キス!?

「送っていただき、ありがとうございました」


頭を下げたときだった。
それと一緒にバッグまで逆さまになり、口が全開になっていたバッグから、中身がバラバラと零れ落ちる。
そして、そのうちの何かひとつが、排水溝の細長い穴に吸い込まれた。

わっ……今の何だろう。
軽い金属音が聞こえた気がしたけれど……。

ちょうど社長が街灯の光を遮る場所に立っていたので、何が落ちたのかはっきりと見えなかったのだ。


「おいおい、何やってんだよ。ったく、すっとろいなぁ」


拾おうと社長がしゃがみ込むから、私も慌てて手を伸ばす。


「……すみません」


散らかった荷物を全て拾い上げてみると、自宅のカギがないことに気づいた。


「あれ……?」


もう一度バッグの中身を確かめる。
いくつかあるポケットも、念のため化粧ポーチの中も。
ところが、どこを覗いてみても、それらしきものは見つからなかった。

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