冷徹社長が溺愛キス!?

まだ整わない呼吸で社長を見上げる。
すると社長は、少し驚いたような表情をしていた。

社長の親指が、ゆっくりと私の唇を拭う。
そして、ほんの少しだけ意地悪そうに微笑んだ。
ポンポンと頭を撫でられて、プシューッと空気が抜けたようにその場に力なく座り込む。
社長は私から離れると、グツグツと煮こぼれるほどに茹だった鍋にパスタを投入した。

今のは、何だったんだろう……。
膝はガクガクだし、放心状態で動けない。

そんな私をよそに、社長はパスタの入った鍋を菜箸でかき混ぜていた。


「おい、奈知」

「……はい」

「いつまでそこにへたり込んでる気だ」


グツグツ煮立つ鍋を見たまま、社長が何事もなかったかのように言う。
そうされると、私の身の上に今起きたことが、ただの妄想だったかのように思えてくる。


「ほら、立て」


不意に社長が私の前に立って手を差し出す。

おそるおそる右手を伸ばすと同時に、強い力で引き上げられた。
その手の熱と力強さに触れて、再び心臓が飛び上がった。

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