冷徹社長が溺愛キス!?

私は、社内で噂になるような可愛い顔でもなければ、目立つタイプでもない。
目につくとしたら、ドンくさい点くらいだ。

麻里ちゃんがフォローしてくれていなかったら、今頃会社にいられなかったかもしれない。
そう思い至ったら、「麻里ちゃん、いつもありがとうね」と感謝の言葉が出てきた。


「なによ、いじけたかと思えば、今度は『ありがとう』なんて。ほんと奈知って変な子」


彼女がクスッと笑いながら、玉子焼きを口に入れた。

この際、変でも何でもいい。
麻里ちゃんに見捨てられたら、きっと私は終わってしまう。


「そういえば、もうすぐ恒例の“あれ”があるね」

「“あれ”?」


麻里ちゃんに聞き返した直後に、それが何であるか思い当たった。
毎年の恒例である、“山登りで親睦を深めよう”という行事だ。

ゴールデンウィークを目前に控えた四月最後の週末に、社員全員参加で日帰り登山するというもの。

登山といっても険しい山を登るわけじゃない。
ファミリーでも楽しめるような気軽な山で苦しいことを一緒に体験することで、社内の連帯感を深めることが狙いらしい。

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