冷徹社長が溺愛キス!?

◇◇◇

運ばれてきた懐石料理に舌鼓を打ちながら、お見合いが終始和やかなムードで進んでいく。
どちらの両親も話好きで、当事者の私たちはそれに気圧されて言葉を交わさないまま。
どういうわけか結婚にノリノリの両家の親は、この話がすでにまとまったかのような円満な話しぶりだった。

そして食事を終えると、お見合いではお決まりの“このあとは若い人たちで……”というセリフで、社長とふたりきりにされてしまった。

広い庭園へ降り立つ。
芝生の敷き詰められた中、飛び石を渡って池の前まで来ると社長は足を止めた。


「馬子にも衣装ってやつだな」


頭の先からつま先まで私のことを眺めた彼が、ニヤリと笑う。


「からかわないでください」


つい唇が尖る。


「どうして教えてくれなかったんですか?」


私の両親との行き違いは、この際仕方がなかったとはいえ、社長は当事者なのだ。
私が相手だと知っていたのなら、知らせてくれればよかったのに。


「知らないなら、そのほうがいいと思ったからだ。そうすれば、奈知の本音を引き出しやすい」

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