冷徹社長が溺愛キス!?
◇◇◇
仕事が終わって帰宅後、空気を入れ替えるために窓を開けると、外気に乗せてベランダからいい香りが漂ってきた。
この甘い香りは沈丁花だ。
明日は、三木専務の分もガーベラを持って行こう。
ジョウロに水を汲みベランダへ出た。
この部屋に住む決め手となったのは、ベランダの広さだった。
ひとり暮らし用の部屋の場合、一畳か二畳くらいのベランダがほとんど。
ここは、その倍の四畳のスペースがあるのだ。
一階に二部屋、二階に二部屋で一棟のアパートが、横並びに五棟建っている。
そのうちの端にある一棟の二階が私の部屋だ。
ちなみに、四部屋のうち三部屋は今のところ空き部屋らしく、出入りする様子も人の気配もない。
おかげで、余計な気を使わずに暮らせている。
水道の蛇口とベランダを何度も行き来して、ようやく水やりを終えたところで、スマホが着信音を響かせた。
サンダルを急いで脱ぎ、テーブルに置いたスマホを手に取ると、それは実家の母親からの電話だった。
「はーい」
ジョウロをテーブルに置き、耳に当てて応答。