冷徹社長が溺愛キス!?

◇◇◇

電車に揺られながら、吊革につかまり窓の外を眺める。
麻里ちゃんは、私のアパートに着いた頃だろう。
今頃、買ってきた食材を手巻き寿司用に準備しているところに違いない。

それにしても加藤くんときたら、突然変なことを言い出すものだ。
いつも私のことをノロマだの鈍いだの言ってコケにするのに、今日に限っては『自信を持て』だなんて。
いったい何だというのか。

そんなことを考えながら着いたアパートの階段を登ろうとして、足を止める。


――バラ?


ラッピングされた一輪のバラが無造作に置かれていた。
それも、一輪だけじゃない。
階段の一段一段に規則正しく置かれていのだ。

いったいなんだろう。
誰かが落としていったようには思えないし……。

そのまま見過ごしていくのも気がかりで、とりあえずひとつずつ拾いながら上がる。
十三段の階段を上がりきった踊り場から、さらに上を見て言葉を失くした。


――嘘。こっちにも!?


同じように一段ごとにバラの花が置かれていたのだ。

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