冷徹社長が溺愛キス!?
「ったく、何かの間違いだろ」
社長はそう呟いたあと、私には聞こえない何かをブツブツと言い続ける。
何かの間違いって、なんだろう。
不思議に思ったものの、ベニバナイチヤクソウのことを思い出した。
「あの、申し訳ありませんがカメラを……」
おそるおそる自分のリュックに手を伸ばす。
すると社長は再び大きな溜息を吐きながらも、私がカメラを取り出しやすいようにリュックを傾けてくれた。
「そんなに珍しい花なのか」
つい夢中になって移動しながら写真を撮っているうちに、ぐるっとひと周りして社長のすぐ近くに戻っていたことに気がついた。
「はい。夏近くならないと見られないんです。それに、ここまで群生しているのも珍しくて。花が咲いていて歓声が聞こえたら、それはベニバナイチヤクソウ以外にないってほどなんです。今日ここで会えるなんて思いもしませんでした」
ついペラペラと話してしまう。
「花のこととなると、随分と饒舌だな。その調子で仕事を花だと思ったらどうだ」
ごもっともなことを淡々と言われて、言葉を失った。