冷徹社長が溺愛キス!?
◇◇◇
「そろそろ行くぞ、雨宮奈知」
社長は自分のリュックを背負い、私の分にも手を伸ばした。
「軽くなったので、自分で背負えます」
「いいや、すっトロイ雨宮奈知のことだ。身軽じゃないと俺についてこれないからな」
自覚があるだけに言葉に詰まっていると、社長は私のリュックを自分の右肩に掛けた。
「すみません……」
重ね重ね、情けない。
「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
歩き出そうとした社長に声を掛けると、社長は足を止めて「なんだ」と聞き返した。
「どうしてフルネームなんでしょうか……?」
さっきから私のことを呼ぶときは、“雨宮奈知”だ。
なんだか叱られているような気分になるから、できれば名字だけにしてもらえないだろうか。
社長は「フンッ」と鼻を鳴らした。