冷徹社長が溺愛キス!?
「不満か」
「あ、いえ……やっぱりなんでもないです。速水社長の好きなように呼んでくださって大丈夫です。すみません……」
社長が目を細めて私を睨むものだから、慌てて取り消した。
よくよく考えれば、社長に呼び方を指示するなんて、身の程知らずだ。
顔を俯けていると、頭から「奈知」と、よく響くテノールの声が降ってきた。
その呼び方にドキンとしてパッと顔を上げる。
「雨宮は四文字で、奈知だと二文字。俺は、効率が悪いのは好みじゃない」
なるほど。さすがは会社のトップ。
話し言葉にも効率の良し悪しを考えるのだ。
そうなると、私のスローペースの話し方は、社長にしてみたらよっぽど効率が悪いことになる。
話すスピードだけじゃない。
動きも同様に鈍いから、きっと社長は私と一緒にいるだけでイライラしているに違いない。
山で偶然私に遭遇してしまったことに辟易しているだろう。
神様すら呪っているかもしれない。
「申し訳ありません」
思わず謝ると、社長は口をポカンと開けて「は?」と顎を突き出した。