そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~

長谷川さんは、本当に優秀だったからなあ。彼が戻って来たらいいのに。別に、へんな意味じゃなくてだけど。


ここは、建設会社の法務課だから、研修に来た人が覚える内容は、ほとんど契約についてになる。契約書の難しい言葉の意味を、たくさん理解しなければならない。


しかも、彼は、法律なんて専門的に勉強してないと言っていたのに、いちいち私の説明を聞かなくても、「わかるから大丈夫だよ」と言って、何でも自分でこなしてしまった。


本当に大丈夫かなと心配したけれど、驚いたことに私よりずっと早く、半年もしないうちに長谷川さんの方が、業務に詳しくなった。いったい、どんな頭してるんだろう。


行く部署みんな、その調子でこなしてるんだと、私は、尊敬と羨望のまなざしで見てた。


『大したことないよ。前に公務員試験目指してたからね。こういうのは、まったく勉強してないわけじゃないよ』


『そんな優秀でも通らなかったんですか?』
長谷川さんが一瞬、固まった。
私ったら、失礼なことを。


『緑川さんは、正直だね。俺、そういうの嫌いじゃないよ。でも、実際はそんなかっこいいもんじゃないんだ。ぎりぎり通ったけど試験の結果が思わしくなくて。それで希望の省庁に行けなかっただけさ』


でも、そんな頭の良い人が、ここにいるのは変だ。

あんまりしつこく聞いちゃ悪いと思ったけど、公務員試験なんて、受かるだけですごいと思うけど。


『緑川さんだって、司法書士の試験受かったんだろ?働きながらだから、すごいよ』
そんな…褒めてもらえると。うれしいな。


『ありがとうございます』
レベルが違いますけど。


でも、ちゃんとお付き合いしてる彼女がいるって言ってたな。ああいう大人の男性なら、いきなり誰かさんみたいに、彼女を、放り出すようなことしないんだろうな。




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