そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
そのうち、カタカタとリズミカルにキーを叩く音がする。

男の人らしく角ばった指だけど、その大きな指がしなやかで、器用な動きをしてる。

あの指が……背中を這うときも……力強くて……繊細で


こら、だめ。
妄想のスイッチも切ってこう。


彼の午前中は、パソコンのセットアップと雑用で終わった。


「亜湖…」


ええっ?午前中終わりなの?

うわっ…もう、そんな時間か?
隣の指が気になって、作業は思ったより進んでない。


「ん?」


「お昼だけど、どうする?」


優人が、私の方に体を向けてきた。
当たり前のように、そう言われても。


「私に聞いてるの?えっと…」



「亜湖しか聞く奴いないだろ?」彼は、笑ってる。

一緒に食べるつもりってこと?


返事に困ってたら、賑やかなしゃべり声がすぐ後ろで聞こえてきた。


「長井さん。お昼行きましょうよ」
由奈ちゃんの同期の女の子達の声がしたと思ったら、あっという間に彼の回りを囲んでいた。

いつの間にか、女の子たち復活したみたいだ。


「亜湖…えっと、課長は?」
彼は、私に助けを求めてきた。
でも、何か答える前に由奈ちゃんが答えた。


「課長は会議中です。長引くから先にお昼行くように伝言されました。長井さん、亜湖先輩と5人でお昼に行きましょうよ」と由奈ちゃんが代わりに答える。


「ああ…そう。えっと」困惑気味の彼。
断る理由が見つからないみたいだ。


「悪いけど、私、約束してるから」
本当に、紗和と約束してるもん。


「おい、亜湖。ちょっと、待てよ」
断わらなかった事、しまったと後悔してる顔だ。
よかったじゃん、女の子に囲まれて。

「残念、また今度ね。4人で行った方がいいよ一人あぶれるし。私には、ご遠慮なく」


「亜湖先輩…ひょとして、彼氏と待ち合わせですか?」由奈ちゃんが言い出した。

はああ?

何だ、その振りは…


「違うよ。まさかこんなところまで来るわけない」


そんな、照れないでくださいよ、と営業部の女の子。
とっても妙な雰囲気。


「いいな。すごく亜湖先輩のこと大事にしてるんですよ」
営業事務の女の子の方が言い出した。

何だ、それ。


「亜湖!お待たせ」
紗和がやって来た。


「なんだ、紗和先輩か」


急になんだ?何が起こった?

ちょっと待って、彼氏?誰の彼氏よ。
いいや、弁解するのもめんどくさい。そんなのどうでもいいや。放っとくけど。




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