そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
偽装恋愛してみますか?

――取り急ぎ、ご相談したいことがございます。

メールを送ったら、長谷川課長からすぐに返事が来た。


たまたま今日、早く帰れるからと言って、課長は、私の誘いを受けてくれた。


長谷川課長の印象は、2年前に何の予備知識もない時でさえ、普通の人と違うなという印象をもった。

知的でクール。その上センスもあるし、私のようなたまたま隣の席になった人間にも、優しく接してくれる。



二年経った今は、その頃よりは、紗和から課長のことを、いろいろ聞かされてる。

だから、今は、プライベートな用事で、私なんかの呼び出しに応じてもらうなんて、なんて恐れおおいことをしているのかという自覚がある。


30才ちょっと過ぎの若さで、課長になるのは、よほどの事だ。課長は、社内でも有名な人で、女子社員が嬉しそうに、あの目立つ人と言えば、だいたい、長谷川課長の事を言っている。


「どう、元気だった?」
声を掛けられて、はっとする。

課長は、オフィスでは見られない、くつろいだ時の顔をしてる。


「はい。今日は、勝手なこと言ってすみません」

私は、頭を下げた。


課長は、朝からバリバリ仕事をこなし、人の倍も働いてるにしては爽やかな顔だ。

頭の先から足元まで、どこもパリッとしてる。


私は、歩きながら、ちらっと横目で課長のことを盗み見る。いつも物静かな人で、メガネをかけている。

この人のダメなところって、どこかなあとあえて、あら探してみたりする。

見事に隙がない。誰かさんみたいに、さっさと一人で先に行くことはないし、女の子を一人ぼっちで歩かせることもない。


っていうか……課長って、まつ毛、長くない?目の形きれいだな。


課長に連れてきてもらった店は、和風の旅館のような内装でとても落ち着いていた。

ビルの中とは思えない。

創作料理の店で、私達がいつも行く居酒屋と違って、板前さんが丁寧に料理を出してくれる店だった。

お店の人に、こちらへどうぞと案内され、お足元お気を付けください。と丁寧な言葉で言われると、ほんの一瞬旅館に案内されている気分になる。
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