健康診断の甘い罠

「い、いえ。そろそろ帰りますので……じゃあ一ノ瀬さん、ありがとうございました」


そう言って私は一ノ瀬さんが貸してくれた服が入った紙袋を持って玄関に向かう。


「遅いから、駅まで送っていくよ」


一ノ瀬さんがそう言うけど私は慌てて手を横に振る。


「大丈夫ですよ。駅まで近いですし」


そう言って私は玄関で靴を履く。


「ほんとにありがとうございます。頑張ってみますね」


そう言って笑う私に一ノ瀬さんも微笑んでくれるけど、やっぱり心配そうな顔をする。


「でも、やっぱり送ってくよ」


「大丈夫ですよ、私、こう見えて足速いですし。じゃあ、ほんとにありがとうございました」


そう言って旦那さんにも会釈すると旦那さんも心配そうな顔しててちょっと笑ってしまう。


「本当に大丈夫なので。じゃあ、また月曜日に」


「うん……。ほんとに大丈夫?」


優しいな、一ノ瀬さん。でもこんな遅くにお邪魔して、服まで貸してもらって。これ以上ご迷惑をかけるわけにはいかない。


「大丈夫です。じゃあ、お邪魔しました」


そう言って一ノ瀬さんの家を出て私は駅に歩き出す。


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