健康診断の甘い罠

「千紗、本当に俺のこと信用してるんだね。嬉しいけど、そんなに素直に頷かれると手出しにくいなぁ。……だけど。うん、じゃあ今度おいで」


そう言って和弥くんが私の頭を撫でて遠くを見る。


風が吹いて、和弥くんの短めの黒髪がサラサラと揺れる。


「気持ちいいね」


その横顔を、やっぱりかっこいい人だなと思いながら私も前を向いておにぎりを食べる。


「……あの、和弥くんちゃんと付き合うの初めてって言ってたけど。何で私だったの?」


そう言うと和弥くんが私の顔をじっと見つめてから微笑む。


「予感がしたから。千紗を初めて見た時に、この子と本気の恋をするなって。歩ちゃんもかわいがってる感じだったし、いい子そうだなって」


そう言った和弥くんが私を見て猫みたいな目を細めて笑う。


そういう笑い方をすると、獲物を狙う肉食獣みたいな目に見えてちょっと怖い。


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