恋色シンフォニー 〜第2楽章〜

本とCDの収納が終わると、望月さんは食器や調理器具の片付けに台所へ向かってくれた。

真木さんには、私の部屋でノートPCの設定をしてもらってる。

ゆえに、部屋には奴と私の2人きり。

「ちょっと。三神の彼女」

奴に呼ばれた。
なんて呼び方だ。
まあ、いずれ橘ではなくなるし、名前で呼ばれるのには抵抗あるけど。

「PC、あいつに見られたくないもの入ってるなら、パスワード設定する?」

「いえ、結構です」

「ふぅん? ないんだ」

「ないことはないですが、彼がそういうことするとは思いません」

「あっそ」

奴は何か思いついたように、キレイな形の唇の片方を上げ、ニヤリと笑った。

「あいつの過去のこと、知りたいなら教えるけど」

「いえ、結構です」

「ふぅん。興味ない? 特に恋愛関係」

この人とは、全然仲良くできる気がしない。

「私が以前付き合っていた人を彼は知っています。そのことについて彼がどうこう言ったことは一度もありません。
それに、付き合いを重ねれば、お互いどんな恋愛をしてきたか、だいたいわかるものではないですか?
私は彼が素敵な女性といい恋愛をしてきたんだろうと思います。それは嫌ではありません」
< 41 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop