恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
本とCDの収納が終わると、望月さんは食器や調理器具の片付けに台所へ向かってくれた。
真木さんには、私の部屋でノートPCの設定をしてもらってる。
ゆえに、部屋には奴と私の2人きり。
「ちょっと。三神の彼女」
奴に呼ばれた。
なんて呼び方だ。
まあ、いずれ橘ではなくなるし、名前で呼ばれるのには抵抗あるけど。
「PC、あいつに見られたくないもの入ってるなら、パスワード設定する?」
「いえ、結構です」
「ふぅん? ないんだ」
「ないことはないですが、彼がそういうことするとは思いません」
「あっそ」
奴は何か思いついたように、キレイな形の唇の片方を上げ、ニヤリと笑った。
「あいつの過去のこと、知りたいなら教えるけど」
「いえ、結構です」
「ふぅん。興味ない? 特に恋愛関係」
この人とは、全然仲良くできる気がしない。
「私が以前付き合っていた人を彼は知っています。そのことについて彼がどうこう言ったことは一度もありません。
それに、付き合いを重ねれば、お互いどんな恋愛をしてきたか、だいたいわかるものではないですか?
私は彼が素敵な女性といい恋愛をしてきたんだろうと思います。それは嫌ではありません」