クールな准教授の焦れ恋講義
「あれ? 早川、来ていたのか」

 寸差のタイミングで先にドアが開かれ先生と鉢合わせの状態になった。

「巴君に書類を持ってきてくれたらしいわよ」

 後ろから飛んできた声に補足するように説明する。

「この前の理事会の議事録をお持ちしました。あと今度の調査先のアポどり完了しましたので大体の日程調整を仮で作ってきましたからご確認ください」

 いつもより事務的な口調になってしまうのは致し方ない。先生は思い出したように私の横をすり抜けて自分のデスクの一番上の引き出しからメモを取り出した。

「今度の調査までに探しておいて欲しい資料があるんだ。そっち(資料館)にないか探してみてくれないか? なかったらかまわないから」

「分かりました」

「巴くん、そんな個人秘書みたいにこき使っちゃだめでしょ」

「いいんですよ、こいつは特別ですから」

 その言葉に私の頬が一気に赤くなる。それを悟られなくてメモを見つめてやや俯き加減になった。

「もしかして元学生さん?」

「そう。しかも俺のゼミだったから、何かと使い勝手がいいんです」

 使い勝手……。ふわふわと空高く舞い上がっていた気持ちは一気に落下した。先生の言う特別なんてそんなものだ。
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