クールな准教授の焦れ恋講義
「早川、こちら西本蘭香(にしもとらんか)さん。俺の大学院時代の先輩で、今年退職した青木先生の後任で大衆文化論を受け持つ予定なんだ」
「そうなんですか。よろしくお願いします」
「こちらこそ。何かとお世話になることがあると思うけどよろしくね。また一度資料館にも挨拶に伺わせてもらうわ」
はつらつとした声はよく通って心地よく先生の先輩というわりにとても若々しい。そして恐らくこの女性がこの前、奥さんが話していた相手なんだろうな、ということが窺えた。
「そういうえば巴くん、この第二章だけど岩田さんの書いてた事例を引用したら?」
パソコン画面を指差しながら西本先生が指摘すると先生はゆっくりと近づいた。
「岩田さんの読んでないんですよ。この前出たばっかりのですよね?」
「そうそう。私のところにはわざわざ一冊送ってくれたけど」
「俺には送ってくれませんでしたけどね」
「こっちでの住所知らないんじゃない? 今度貸してあげるわ」
打てば響くような会話のやり取りに私は全くついていけずに、軽く挨拶して今度こそその場を後にしようとする。
ドアを開けたとき先生はパソコン画面に釘付けで私には見向きもしなかった。そんなこと今までも何回もあったのに、そのときは今までにないくらい悲しくなった。
「そうなんですか。よろしくお願いします」
「こちらこそ。何かとお世話になることがあると思うけどよろしくね。また一度資料館にも挨拶に伺わせてもらうわ」
はつらつとした声はよく通って心地よく先生の先輩というわりにとても若々しい。そして恐らくこの女性がこの前、奥さんが話していた相手なんだろうな、ということが窺えた。
「そういうえば巴くん、この第二章だけど岩田さんの書いてた事例を引用したら?」
パソコン画面を指差しながら西本先生が指摘すると先生はゆっくりと近づいた。
「岩田さんの読んでないんですよ。この前出たばっかりのですよね?」
「そうそう。私のところにはわざわざ一冊送ってくれたけど」
「俺には送ってくれませんでしたけどね」
「こっちでの住所知らないんじゃない? 今度貸してあげるわ」
打てば響くような会話のやり取りに私は全くついていけずに、軽く挨拶して今度こそその場を後にしようとする。
ドアを開けたとき先生はパソコン画面に釘付けで私には見向きもしなかった。そんなこと今までも何回もあったのに、そのときは今までにないくらい悲しくなった。