クールな准教授の焦れ恋講義
 報告会で使う資料が出来たので私は感情を顔に出さないように気をつけながら大学にきていた。先生だけではなく大学には他にもあの資料館に出入りする人はいるのでそちらにも顔を出す。

 大学に来たついでに最終的にいつも先生の研究室に寄ってしまうのはもう癖みたいなものだ。

「早川さん」

 名前を呼ばれて振り向くと西本先生がこちらに手を振ってくれていた。やはり先生よりも低いが女性としては背が高くすらっとしている。

「こんにちは。巴くんから聞いたと思うんだけど、今度の報告会に一緒に参加させてもらうわね。こちらのご挨拶はもちろん、そちらの資料館のことも知りたいし」

「はい。よろしくお願いします。あ、これ報告会の資料なのでよろしければ」

 その場で資料を手渡すと西本先生がふっと微笑んだ。知的な女性といった感じで思わず見惚れてしまう。それじゃ、と先に歩き出した西本先生からほのかに嗅いだことのある香りがした。

 資料を持ち直して、躊躇いながら先生の研究室のドアをノックすると今日は中から返事があった。

「お疲れ様です」

「お、来たな。例の資料、そっちになっかったんだな」

「すみません。一応、中央図書館に訊いてます。持ち出しは不可かもしれませんが」

 今日の先生の格好は白シャツにネイビーのカーディガン風の羽織りとなかなか品よくまとめている。相変わらず若々しく見えるがそんな先生ももうすぐ三十五歳、私よりも十も年上なのだ。
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