クールな准教授の焦れ恋講義
 じっと先生を見つめていると視線が交わって少し慌てた。先生は気にする素振りもなく私に真っ直ぐ近寄ると、その右手をなんの気なしに私の頭に置いた。

「さすが。気が利くな」

「先生の雑用は慣れていますから」

 軽く微笑まれて心臓が鷲掴みされた。顔を見られたくなくて反射的に俯くと、その口から出たのは相変わらず可愛くない言葉だった。中学生でもあるまいし、こんなことでいちいち動揺している私はおかしいのだろうか。恋をするとはこういうことなんだろうか。

 そこでもうひとつの伝達事項を思い出し、西本先生にも渡した資料を差し出す。

「来週の報告会と懇親会、よろしくお願いします。先生、理事として挨拶して頂かないといけないんですから、その日はジーンズはやめてくださいよ」

「分かってるって。あ、それから蘭香さんも一緒に行くから。どうせ青木先生の後任ということで紹介しようと思っていたし」

「あ、はい」

 意識してではなく、本当にさらっと先生が西本先生のことを名前で呼んだのが気になった。先輩だからしょうがないのかもしれないけど、先生が女性を名前で呼んでいるのは初めて聞いた。

「先生と西本先生は親しいんですか?」

「ま、色々世話にはなってるしな。前は別の大学に勤めていたけど移りたがっていたから、俺が青木先生の後任でこの公募が出るって教えたんだ。恐らく俺よりも講義は上手いぞ」

 先生がこんな風に手放しに褒めるなんて、本当に出来る女性なのだろう。そして言うかどうか迷ったことを思いきって言葉にした。
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