クールな准教授の焦れ恋講義
 矢野さんの話では今回の記事を皮切りに、来年度の企画展とあわせてこの土地の郷土史についての連載記事を書きたいらしい。

 ちょうど去年、近くのお寺の蔵から江戸時代にこの辺を襲った流行り病に関する資料が新たに見つかったのだ。

「資料に関することは私より専門家に訊いたほうがいいと思います。ちょうど今日もいらっしゃるので」

「それって、巴裕章先生?」

「え、どうして」

「矢野くん」

 私の声はよく知っている声に被せられた。声のしたほうを振り向けば、そこにはスーツを着た先生と隣には同じようにパンツスーツを着た西本先生の姿もあった。

「先生、お久しぶりです」

「すっかり新聞記者やってるな。調子はどう?」

「まあまあです。今回はこちらの資料館さんにご協力いただいて記事を担当になりました。先生にもお話をお伺いすると思いますがよろしくお願いします」

「そこは矢野くんが適当に書いてくれたたらいいよ」

 そう言って二人は笑い合っている。口をぽかんと開けたままだった私はようやく疑問を口にした。

「お二人は知り合いなんですか?」

 その質問に答えてくれたのは先生のほうだった。 

「あれ? お前らまだ自己紹介してなかったのか? 矢野くんも総合社会学科卒で早川の、えっと二年上か?」

 最後は矢野さんのほうに確認するように説明した。矢野さんは笑顔で頷く。

「そっか、早川さんも総社だったんだ。まさか後輩だったとは。改めてよろしくね」

 そのことで親近感を抱いたのか矢野さんはさっきよりも砕けた口調になった。
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