クールな准教授の焦れ恋講義
 報告会は滞りなく終わり、その後の懇親会に会場を移ることになった。近くの宿泊施設で宴会場を借りている。

 少しは先生と話せるチャンスがあるかな、と思っていたが先生の隣には西本先生がいたし、他の先生たちと専門的な話で盛り上がったりしているので私はそれらを遠巻きに見ることしか出来なかった。

 そんなわけで私は田代さんの隣で世間話をしながら、こんなことなら早めに切り上げようかなと考えていた。幸い私たちが座っているのは入り口近くだ。

「今日はありがとうございました」

 我々の背後に回ってきた矢野さんがわざわざ挨拶に来てくれた。一足先に帰るようだ。

「聞けたい話は聞けた?」

「はい。またお電話で確認することもあるかもしれませんが」

 田代さんが確認を終えたところで急に何かを含んだような笑みを浮かべた。

「ちなみに矢野くんは彼女とかいるの?」

「え、いや。残念ながら」

 田代さんの質問に矢野さんは不意打ちを食らったように慌てている。すっかりお酒が入っている田代さんは、矢野さんが若いこともあって絡む気満々だ。そして

「聞いた? 早川さん、これはチャンスよ。連絡先聞いておかなきゃ」

 それは矢野さんだけではなく私に対してもらしい。私はこっそりため息をついた。田代さんは普段はつかず離れずの程よい距離を保ってくれる職場の先輩なのだが、こうして酒の席になるとお節介モード全開になるのだ。

 なんでも今の私の年齢のときには結婚していたらしく彼氏がいない私のことを密かに心配してくれている。余計なお世話ではあるが、それを面と向かって言えるほど私も心臓が強くはない。
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