クールな准教授の焦れ恋講義
 報告会を終えた翌日、私は先生に会いたいような、会いたくないような複雑な気持ちだった。それでも、こういうときに限って用事というものがあるのでなんともタイミングが悪い。

 どっちみち、とりあえず昨日のことは酒の席の話ということで、改めて二十五日のことを尋ねる必要がある。

 緊張しながら研究室に足を運び、用事を済ませても先生はいつも通りだった。そして私は痛いほど強く打つ心臓を押さえながら口火を切った。

「先生、二十五日なんだけど」

「矢野くんと飯行くんだろ? よかったじゃないか」

「なんで? その日は先生と約束してたじゃないですか」

 その言葉に噛み付くように反射的に声を荒げた。

「一人で過ごすようなことになったら、って言っただろ? 矢野くんはいい奴だぞ。向こうも満更じゃなかったみたいだし、あいつは嫌なことは嫌ってちゃんと言う奴だからな。お前ももっと自分に自信をもってちょっと若者らしくデートでも楽しんでこいよ。誕生日なんだから」

「そんな、ほぼ初対面の人に祝ってもらうより先生のほうがいいです」

「んなこと言ってたら、いつまで経っても彼氏なんて出来ないぞ?」

 なんで、どうして……。黙っているとばつが悪くなったのか言い訳するように先生が続けた。 

「二十五日、夕方から会議が入ったんだよ。何時に終わるかわからないから、店の予約も出来ないし」

「予約とかしなくていいです」

「でも金曜日だから、どこも混んでるだろ」

「お店とかじゃなくていいです。先生の家は駄目ですか?」

 これは私にしては随分と大胆な発言だった。当たり前かもしれないが、私は先生の家に上がったことはない。それとなくお願いしてみてもいつもかわされていた。
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