クールな准教授の焦れ恋講義
 約束した場所についたとき、矢野さんは既に待っていたので非常に申し訳ない気持ちになった。矢野さんの服装はこの前会ったときがきっちりしていた分、今日はタートルネックのカットソーにデニムパンツとラフだが野暮ったくない感じだった。

 対する私はというと、そういう意味ではないとはいえ先生以外の異性と二人で食事に行くというのが初めてで随分と格好に悩んでしまった。

 そして散々悩んだくせにシンプルなブラウスにニット地のスカートを組み合わせてトレンチジャケットを羽織っただけという至って無難なものにまとめた。

「じゃぁ、早川さん。お誕生日おめでとう!」

「ありがとうございます。矢野さんも明日、お誕生日おめでとうございます」

 連れてきてもらったお店は創作パスタが有名な美味しいイタリアンのお店だった。店内の雰囲気はシックでとても落ち着いている。まさにデート向きだ。

「本当にすみません、わざわざ気を遣わせてしまって」

「いいよ、いいよ。後輩にご飯奢るくらいどうってことないって」

 矢野さんは本当に面倒見のいいお兄さんという感じだった。聞けばマリンスポーツサークルの部長をしていたらしく、今でも時々サーフィンに行くらしい。

 その焼けた健康そうな肌はそういうことなのか。本ばかり読んでいる先生とは反対だな、と思ったところで頭を振る。

「どうしたの?」

「いえ、すみません」

 先生のことは諦めると決めたのだ。余計なことを考えずに楽しもう。

 矢野さんは新聞記者ということもあって色々なことを知っていて話題豊富だった。それに同じ学科卒ということもあり大学のときの話に花を咲かせたり、仕事の愚痴などを語り合ったりと会話は思った以上に弾んだ。
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