クールな准教授の焦れ恋講義
「参ったな」

 あのときと同じ台詞を先生は口にした。

「最後? 早川にはいつも困らされてばかりだよ、俺は」

 その台詞に私は目の奥がじんわりと熱くなった。どうやらイイコでいたと思っていたのは私だけだったようで私はずっと先生を困らせていたらしい。

「ごめん、なさい」

 鼻の奥がつんと痛くなってまるで水の中に潜っているような気分だ。おかげで自分の発した言葉もよく聞こえない。これ以上どんな言葉が投げかけられるのか、静かに待つことしか出来なかった。

「それに」

 私は息を呑んで強く目を瞑った。続けられる先生の言葉が予想できなくて怖い。

「なんで振ってくれってなるんだ? もう一回告白して考えさせてくれるんだろ?」

 顔を上げると、先生はどこか困ったような顔をしてすぐにその場を後にした。そして戻ってきたかと思うとその手にはタオルとハンガーを持っている。

「とにかく、まずはその濡れた上着を脱いで身体を拭け」

 タオルを頭から被せられ、先程の発言を考えるまもなく私は言われるままジャケットを脱ぐと、先生がそれを奪い取るようにしてハンガーにかける。そして呆然としたままの私に向き直り力強くタオルを動かした。

「先生、意外とまめですね」

「お前が無頓着すぎるんだ」

 いつもの調子でやりとりを交わしながらも私の心は落ち着かない。雫が頬に飛んで冷たい。先生の拭き方は随分と乱暴だけど、私はおとなしく受け入れた。

 こんな風に触ってもらえることなんて滅多にない。あらかた拭き終えたところで先生の手の力が緩み、私は軽く髪を整え直した。
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