クールな准教授の焦れ恋講義
「ま、だからある程度いいところに住んでるだろ?」

 机の上に水色のカップが置かれて、視線をじっと移す。湯気が立ち上ってコーヒーのいい香りが鼻をかすめた。

「どうした?」

 立ったままでいる私にソファに先に腰かけた先生が不思議そうに尋ねてきた。そして今更ながらいつも大学でかけている眼鏡と違うことに気づく。

「先生、誰かここによく来るの? 西本先生とか」

 口にするかどうかたっぷり悩んでから、ここまできたので今更遠慮してもしょうがないと開き直ることにする。すると先生は怪訝そうにこちらを見てきた。

「は? なんで蘭香さん?」

「だって、先生一人暮らしなのに色違いのカップがあるし。それに今日、先生のマンションから西本先生と一緒に出てくるのを見ちゃって」

 尻すぼみになりながらぼそぼそと答えると先生はテーブルにカップを置いた。

「お前は相変わらず妙なことに頭が回るな。これは結婚式の引き出物でもらったんだよ。あと、今日は共済会館で会議があったから蘭香さんと一緒に大学を出たんだけど、俺が会議で使う資料を家に忘れたのに気づいて取りに回ったんだ。別に家には上げていない」

 面倒くさそうに説明されて私はその場に座った。さすがにソファに座るのは気が引けるし、ラグが敷いてあったので目の前のコーヒーをようやく頂くことにする。

「早川こそ矢野くんとは、どうだったんだ? ちゃんと祝ってもらえたのか?」

 コーヒーを二口すすったところで投げかけられた問いかけを私はどう受け止めていいのか悩んだ。
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