クールな准教授の焦れ恋講義
「あ、それで日によく焼けてるんだ。それにしても偉いね、休日にこうしておじいちゃんのお店を手伝うなんて」

「別に」

 これを会話とよんでいいものなのか。やはり私は若い(というと先生が年寄りみたいだが)男性とは何を話せばいいのか経験不足すぎて悩んでしまう。

 また沈黙が降りてきたところで口火を切ったのは意外にも和弘くんのほうだった。

「偉いのはじいちゃんだよ。去年ばあちゃんが死んでしばらくこの店も閉めてたんだ。うちの親はもう畳めば? なんて言ってたけど、ばあちゃんとの思い出の店だし少ないけど常連さんもいるからってまた再開させて。俺は本のことはよく分かんねえけど、小さい頃からじいちゃんがこの店を大事にしてるのは知ってるんだ。だから、少しでも力になりたくて」

 ぼそぼそと、でもその発言には強い意志を感じた。他人だからとはいえ下心ありで手伝っている私とは大違いだ。

「和弘くんのその気持ちが澤井さんにとって一番の力だよ!」

 胸を打たれて私は勢いよく立ち上がる。時計をちらりと確認し先生は今頃調査中かなと一瞬だけ考えて再び作業を再開させることにした。

 翌日も澤井古書店で作業をして重い身体で家路についた。夕方、携帯を確認したが先生からの連絡はない。

 早く帰ってきたら会おう、なんて言ってたけど思ったより調査が長引いているのかもしれない。これもいつものパターンなので期待はしていなかったが、それでも落胆してしまうのはしょうがない。

 残念な気持ちを抱えながら明日から仕事もあるし私は早めに休むことにした。
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