クールな准教授の焦れ恋講義
 腰を上げて和弘くんのダンボールを運ぶのを手伝いに行く。私はこの週末も古書店の手伝いをしていた。

 先生はどっちみち研究会やなんやらで土日ともに用事があったし、出来れば今月末の先生の誕生日までにあの本が欲しい。それに貴重な郷土資料を持っているだけあって、澤井さんの話は物凄く興味深かった。

 本や資料の整理も勉強になるし、いいこと尽くしだ。この手伝いが終わったら先生も連れてきてあげたいな、と思ってある疑問が浮かんだ。

「和弘くんはどうして巴先生のゼミを選んだの?」

 パソコンに打ち込みを終えた本たちを棚に差しながら、隣の高い位置を担当している和弘くんに尋ねた。

「シラバス見て一番興味をもったから」

 端的な回答に私はさらに踏み込んでみる。

「もしかして……この古書店を手伝うため?」

 すると、無表情だった和弘くんの横顔が少しだけ崩れた。微かな動揺に私はつい笑みが零れてしまう。

「なんだよ」

 怒っているような声は照れ隠しだというのはもう分かった。

「ううん。もしよかったら今度、資料館にも遊びに来て。私でよかったら案内するよ」

 それに返事はなかったけど、断られなかったので良しとしよう。
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