クールな准教授の焦れ恋講義
「なぁ、巴先生って恋人いるの?」

 しばらく間が空いてからの突然の質問に私は持っていた本を落としそうになった。が、寸のところでキャッチする。

「え、なんで?」

 極力、平静に答えようとするも心臓が痛いくらい強く鳴り響く。和弘くんは視線をこちらに寄越さず作業しながら続けた。

「女子が訊いてこいって煩いから。あんた、巴先生と付き合い長いんだろ?」

 あのとき研究室で一緒になった女子たちには私と和弘くんと知り合いなのはあからさまだっただろうし、私の存在を含めて訊いてこいと言われたようだ。

「どうなんだろうね」

「西本先生と付き合ってんの?」

「どうしてそう思うの?」

 つい質問を質問で返した。この前もそうだが西本先生の名前が挙がったことで心が波立つ。

「巴先生の研究室で西本先生が巴先生の論文をチェックしたり、何かと一緒にいて、なんか仲良さそうだって女子が」

「そうなんだ」

 さっきから差し障りのない返事をするのが精一杯だった。先生のことを疑っているわけではないけど、誰から見ても西本先生と親しいのは明らかなのだ。

 でも職場が同じで元々研究分野も似ている二人が一緒にいてもおかしいことは何もない。仮にこれが男性同士の先生に置き換えてみるとよく見る光景だ。

 それに私も今まで先生のところに出入りしていた際、学生に色々と言われたことはあった。しかし現に恋人でもないし仕事の用件もあったのであまり気にしてこなかったが、今はなんだか後ろ暗くなる。

 もう私は学生でもないし先生との交際は何も悪いことはないのに、それが露見するのが怖い。もしバレたら学生たちに散々好き勝手言われるだろうし、そういうので鬱陶しい思いを先生にさせるのは申し訳ない。しばらく先生の研究室に行くのは控えようとこっそり誓った。

 そして自ら話題を振って訊いてきた和弘くんだったが、自分が興味があることでもないので深くは追求せずにこの話題は終わった。
< 66 / 90 >

この作品をシェア

pagetop