クールな准教授の焦れ恋講義
「ごめんなさい。その日はちょっと先約があって……」

 涙を呑んで断る。日曜日は二十四日で澤井古書店に最後に手伝いに行く日なのだ。前日が仕事で行けない分、この日は外すわけにはいかない。

「そうか」

「本当にごめんなさい」

「別に謝らなくてもいいって」

 電話の向こうで先生が苦笑しているのが分かる。声を聞いたら会いたくなってきた。しんみりしていると、そういえば、と先生が続けた。

「お前、澤井と知り合いなのか?」

「あ、うん。年度末まで郷土史の展示コーナーをしてたでしょ? 個人の蔵書も借りてたんだけど、その持ち主が和弘くんのお祖父様だったの。それを返しにいったときにちょっと知り合って」

「あー、そういえばじいさんとこで下宿してるって最初に自己紹介してたな」

「なんで先生が知り合いだって知ってるの?」

 研究室で会ったときは先生はいなかったし、和弘くんが自分から話すとは思えないけど。すると先生は歯切れ悪く答えてくれた。

「ゼミの女子たちが色々騒いで澤井に訊いてたからな」

 あの女子たちの面々を思い出して納得する。そして先生の話しぶりから和弘くんは私が古書店を手伝っていることは言わなかったようだ。余計な気を遣わせてしまってなんだか悪いことをした気持ちになってきた。
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