クールな准教授の焦れ恋講義
 日曜日、朝から古書店に来ると和弘くんは既に作業に入っていたので私も急いで手伝う。ある程度のデータベース化も進み、埃をかぶっていた本たちもきっちり分類化され分かりやすくなってきた。

 いつの間にかお昼までご馳走になるのも定番化し、今日で私の役目も終了だと思うとなんだか寂しくなってくる。そして夕方前までにはあらかたの作業は片付いたのだった。

「早川さん、忙しいのにこんなにもしてくれて感謝しとる。色々すまんかったな」

「こちらこそたくさん勉強になりました」

 澤井さんの声はいつになく弱々しく永遠の別れでもないのになんだか湿っぽい雰囲気になってきた。

「本当、あんたが和弘の嫁にでもなってくれたらなぁ」

「何言ってんだよ、じいちゃん!!」

 和弘くんの怒声が飛んで来て私は思わず苦笑した。何回か店にやってきた常連さんたちにまで同じようなことを言われる始末だ。からかわれる和弘くんには毎度申し訳ない。

「あの例の本なんですけど……」

 話題をかえる意味も込めて切り出すと、澤井さんは笑顔を作って本が飾られているショーケースに歩み寄った。そして、持っていた鍵たちの中から一本を選り分けて差し込む。

 擦れるような音と共にガラスが動き、本を大事そうに取り出した。私はいそいそと自分の鞄を持ってきて用意していたお金の入った封筒を取り出す。
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