クールな准教授の焦れ恋講義
 家路を急ぎながら私は運転席に置いた本に何度も確認した。やっと手に入った喜びでついつい顔が綻んでしまう。

 先生の誕生日は明日だけど、今日中にこの本を渡したくなった。何より先生に会いたい。本が好きな先生だから私以上にこれを大事にしてくれるに違いない。

 駐車場に着いたところで、焦りながら電話を取り出して先生にかける。先生は五コール目で出てくれた。

「奈津? お前、用事はどうしたんだ?」

「思ったよりも早く終わったから。先生さえよかったら会いたいの」

 すると電話の向こうから気まずそうな微妙な声が聞こえてくる。

「あー、悪いな。今、大学でちょっと仕事してて」

 私もこれには一気に落胆する。でもしょうがない、元々断ったのはこっちなのだから。

「仕事が終わったら会いに行っていい? ちょっとだけでもいいから」

 最悪この本を渡すだけでも、と思って懇願する。これぐらいのわがままなら許されるだろうか。

「いいけど、夕飯はちょっと難しそうなんだ」

「いいですよ、食べておくから」

 そう言って私はなんとか先生と会う約束を取り付けたのだった。時計を見れば午後五時過ぎ。気を抜いたら急に眠たくなってきた。とりあえず先生から連絡が来るまで家で一眠りしたほうがよさそうだ。
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