クールな准教授の焦れ恋講義
「悪い、ちょっと欲しかった本のことで相談してて。夕飯はこの前の調査で一緒だった田中さんたちも同席してたんだけど」

「大、丈夫だよ」

 そんなに必死にフォローしてくれなくて、というのは声にはならなかった。なんだか泣きそうになるのをぐっと堪える。

「奈津?」

 不思議そうに先生が寄ってきてくれた。ヤキモチとはまた違う感情が私の中で渦巻いていく。私の前では吸わない煙草は西本先生の前なら遠慮なく吸える。私が手に入れようと必死だった本は西本先生なら簡単に手に入れられる。

 その現実が痛い。私は先生の彼女なのに、先生のして欲しいことをしてあげられていない。先生の思う恋愛を私はちゃんと出来ているんだろうか。

「ごめん、なさい」

 色々とこみ上げてきてようやく絞り出せたのは涙混じりの謝罪の言葉だった。そして先生は驚いたような傷ついたような表情をして大きく目を見開いた。

 先生の唇がおもむろに動いて何かを声にする前に今度は鞄にいれていた私の携帯が鳴ったので意識をそちらにもっていかれる。

 なんとも間が悪いが、無視するわけにもいかない。鞄を開けて番号を確認すると登録されていない番号だった。状況が状況だし出るかどうか迷ったが仕事関連の連絡だと困る。先生に断りを入れてから背を向けて通話ボタンを押した。
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