クールな准教授の焦れ恋講義
 突然のことに驚いて叫びそうになるのを抑える。いつもよりもきつく抱きしめられ、背中から先生の体温がじんわりと広がっていくが身動き一つとれない。

「お前は釣った魚に餌をやらないタイプなのか?」

「さかな?」

 顔は見えないけど、声がいつも以上に近くて心臓が一気に加速する。この状況に緊張しておかげで言っている意味もよく分からない。けれど、どこか不機嫌そうなのは伝わってきた。

「先生、怒ってる?」

 恐る恐る尋ねると体勢を変えないまま一拍間をおいてから返事があった。

「怒ってはいない。けど、彼女が他の男に向かって会いたいとか来てくれるのを待ってる、なんて嬉しそうに言ってたら腹の一つぐらい立ててもいいんじゃないか?」

「あ、あれは和弘くんだけに言ったんじゃなくてっ」

 慌てて事情を説明しようとしたらいきなり首筋に柔らかい感触があって驚きで身を縮めた。先生の唇が肌を滑って、それと同時に髪が頬に触れる。くすぐったさとはまた違う、何かに追い立てられるような衝動を感じて初めてのことに戸惑いが隠せない。

「お願い、ちゃんと聞いて」

「聞いてるだろ」

 上擦った声でなんとか抗議するとそのままの位置であっさりと返された。息がかかって熱い。これでは説明するどころではない。
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