クールな准教授の焦れ恋講義
 逃げるように身体を捩ろうとしたけど、力強い腕はびくともしなくてあまり意味がなかった。それどころか首元に再び唇を押し当てられ音を立てて軽く吸われる。反射的に私はぎゅっと目を瞑った。

「で? 名前で呼んで随分と親しそうだし、いつの間に連絡先を交換するぐらい仲良くなったんだ?」

「っ、先生だって西本先生のこと名前で呼んでるくせに!」

 負けじと早口で言い返すと、回されていた腕の力が少し緩んだ。密着していた背中が離れて空気に触れると汗ばんでいたことに気づく。

 身体を引きずるようにして前に進み、後ろにいる先生のほうを見ると意外そうな顔でこちらを見ていた。

「そんなこと気にしてたのか」

 思いもしなかった、というような言い方に私は眉をひそめる。それはこっちの台詞だ。

「奈津が心配するようなことは何もないぞ。あの人もうずっと付き合っている彼氏がいるし」

「そうなの!?」

 しかし思いもよらなかった情報に素直に感嘆の声が漏れる。

「相手も研究者で勤め先も離れてたから、なかなか結婚するタイミングがとれなかったみたいだけど、こっちに移って距離が近くなったからそろそろ考えてるって話してたぞ。それに名前を呼んでるのは同期に同じ西本って苗字の奴がいて、紛らわしいから共通の知り合いはみんなあの人のことは名前で呼んでるんだよ」
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