クールな准教授の焦れ恋講義
 そうだったんだ、というのは声になったのか、ならなかったのか。もっと早くに教えてくれたらよかったのに。

 けれど先生にとってはわざわざ言うほどのことでもないぐらい取るに足らないことだったのだろう。私だって気になっていたのに今の今まで訊かなかったわけだし。少しだけ胸のつっかえがところで私も事情を話す。

「私も先生が心配するようなことはなにもないよ。和弘くんとは……」

 そこで言葉に詰まった。眼鏡の奥からじっとこちらを見つめてくる先生の瞳に上手く言い訳できない。私は観念して抱えて持ってきていた袋を先生に差し出した。

「一日早いけど先生の誕生日プレゼントを渡したくて」

 話が飛んだことに訝しがりながらも先生は受け取ってゆっくりと中身を確認し始める。

「お前、これ……」

 案の定、本を見て驚愕の色を浮かべている先生に私は伏し目がちになった。本当はここで胸を張って笑顔で「驚いた?」って尋ね返す予定だったのに。

「いくらしたんだ? そもそもどこで?」

 畳みかけるような先生の質問に私はぽつぽつと和弘くんとのことを含め、この本を手に入れた経緯を話し始めた。
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