クールな准教授の焦れ恋講義
「研究室に行かなかったのは学生さんたちに色々言われて先生を困らせるのも申し訳なかったし、原稿だって私じゃなくても西本先生がいると思って」

「何、遠慮してんだよ。学生が色々言うのは毎年のことだし最初だけだろ。それに西本先生に見てもらってたのは今度、恩師の退官記念に教え子たち何人かで論文集を出すことになって、専門性が強いものだから見てもらってたんだ。いつも頼まれて書いたり、本にする分は奈津みたいに少し知識があって一般的な目線で見てもらったほうが有り難いんだよ」

 懸命にフォローしてくれる先生の優しさが嬉しくて波打っていた心が落ち着いていく。

「うん、分かった。ありがとう」

「いーや、お前は分かってない」

 まさか即座に否定されるとは思っていなかったので緊張が走った。

「分かってないって何が?」

 不安げに顔を上げて視線を遣ると、目が合った先生はそっと私の頭に手を置いた。

「俺がどれぐらい奈津のことを好きかってこと」

 その口から紡がれた言葉に私は大きく目を瞠る。目に映る先生の表情はどこか切なそうだった。

「七年も焦らして、お前の気持ちも知ってるのに他の男と会うのを勧めたり信用ないのも無理はないけど、それでも奈津が思っている以上にちゃんと想っているから」

 ゆっくりと私の目を見て一言一句はっきりと伝えてくれる。そして、こつんとおでこがぶつかった。そこから先生の体温が伝わってきて目を逸らすことが出来ない。
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