クールな准教授の焦れ恋講義
「だから、そんな頑張りすぎなくていいんだよ。先は長いんだ、息切れするぞ」

 息切れどころか息が詰まりそうだ。じんわりと滲むように目の奥が熱くて苦しくなる。

「先生、私のこと好き?」

 心の中ではさらっと言ってのけたのに口から出た声はなんともぎこちないものだった。疑ってるわけじゃない。それでも、もし聞かせてくれるなら――。

「好きだよ」

 茶化すこともなく余計なものもないたった一言。それでも私が一番聞きたかった言葉をこのタイミングで先生はちゃんとくれる。大好きな聞きなれた声に乗せられて溶けて、沁みていく。

「分かったか?」

 照れくささからか、ふいっと視線を外した先生に私は自然と笑顔になった。

「はい」

 今度は自分から先生の背中に腕を回して思いっきり抱きついた。

「私のこと研究と本の次くらいに好きってこと、よーく分かりました」

「あのなぁ」

 わざとらしく言うと先生はがくりと肩を落とした。先生の胸に顔を埋めたまま頬が緩むのを止めらない。この体温も煙草の香りも何もかもが愛しくて笑みが零れる。

 本当はちゃんと先生の気持ちも伝わったけれど、ここで全部分かった、なんて言ったらもう言ってもらえないかもしれない。それに照れ隠しもあってあんな風に言ってしまった。

 先生の様子を窺おうとそっと顔を上げると唇に温もりを感じた。そしてそれはすぐに消えると吐息がかかるくらい近くで改めて目が合う。

「言って分からないなら、行動で分からせてやる」
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