クールな准教授の焦れ恋講義
「先生、ありがとう」

 目尻を下げて私はお礼を告げた。

「それはこっちの台詞だ。奈津だって俺のためにあの本を手に入れてくれたんだろ? それに比べたらたいしたことないって」

「あ、うん。でも別ルートで手に入りそうなら、無理しなくても」

「あっちを断るよ。ちゃんと大事に使わせてもらうから」

 私の言葉を遮ってきっぱりと答えてくれた。先生はやっぱり大人だ。私が何を言おうとして、それを分かったうえで欲しい言葉をくれる。

「また研究室にもちゃんと顔出せよ。口実が欲しいなら仕事はたっぷりと用意してやる」

「そんな気遣いは無用ですから仕事してください」

「俺が奈津の顔を見たいから言ってるんだ。私に出来ることなんて、とかくだらないことでいちいち悩むな。顔見せるだけで十分、役に立ってるんだよ」

 そんな殺し文句が返ってくるとは思ってもみなかったので、仕事モードだった私は簡単に崩れ去る。

「先生の仕事がはかどるように手伝えることは今まで通りやりますから」

 そう答えたものの赤い顔で言ってもきっと締まりがないだろたう。頬を隠すように押さえていると先生はさらに続けた。

「この前の電話だって、気遣ってくれてありがとう、なんて言ってたけど俺が会いたいから連絡したんだ。お前が会いたいなら俺だって会いたい。恋愛中なんだろ? 俺たちは」

 同意を求められる形で私は静かに頷いた。恋愛中という言葉が先生の口からでて今更ながらに私たちは付き合っているのだということを再確認させられる。きっと先生はわざわざ言ってくれたんだろうけど。
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