クールな准教授の焦れ恋講義
 なんて言っていいのか分からずに硬直していると前触れなく腕をつかまれて簡単に引き寄せられた。肌が触れあってまた心臓が早鐘を打ちだす。私の体温が上昇したのか、先生の平熱が高いのか、身体が熱い。

 何も言わずに伝わってくる体温と肌と肌が重なる心地よさに身を委ねた。髪をそっとかきあげられ、額に口づけが落とされる。

「これからも、ちょくちょく泊まりにこいよ」

「こういうことをするために?」

「そう。愛されてるって実感するために」

 素直にはい、と言えず意地悪く尋ね返すと、とんでもない答えが返ってきた。これにはさすがに切り返しに困る。

「い、意外と、釣った魚に餌をやるんですね」

 なので、昨日言われた言葉を思い出して返した。先生に片思いしていた頃は、想いが実ったとしてもあまり関係は変わらないと思っていた。まさかこんな風に愛されるなんて。

「餌? 毒かもしれないぞ?」

「毒?」

 先生はおかしそうに笑った。こんな笑顔を近くで見られるなんてなかなか貴重だ。もう何にときめいて苦しいのかがよく分からない。

「徐々に浸透して、気づけばそれなしではいられないような甘い毒かもな」

「ものすごい中毒性ですね」

 そう言いながら先生の指が私の髪に触れて、梳いてくれる。はらはらと髪が肩にかかってくすぐったい。

「そうだな、だからやめるなら今のうちだぞ」

「やめませんよ!」

 私はきっぱりと答えた。
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