クールな准教授の焦れ恋講義
「そもそも前提が違います。私、ずっと釣り上げて欲しくて待ってたのに、なかなか焦らして釣ってくれなかったのは先生のほうでしょ?」

 先生の顔を覗きこむと、かすかに茶色がかった瞳が揺れた。唇が触れそうなくらい近くて緊張しながら続ける。

「今のうち、なんてもう無理ですよ。とっくに先生の甘い毒に侵されちゃってます。だから釣ったなら最後まで責任取ってくださいね」

 一息で言い切ると心臓の音が急に大きく聞こえ始めた。この音は先生にも聞こえているんだろうか。先生は目が合うとそのまま唇に軽く口づけてくれた。そして眉根を寄せて不満顔になる。

「最後までって言うなら、名前で呼べって言っただろ? 急には無理でも少しずつでもいいから」

「ど、努力します」

「そうしてくれ。俺と恋愛のその先までする気があるのなら」

 それがどういう意味かとあえて尋ねるほど私も鈍くはない。もちろん、私だって望むところだ。

 一度振られてから三年が過ぎて、何度もこの想いを断ちきろうと思った。この七年は私にとってはすごく長いもので、それでも後から振り返ればあっという間だったと思えるくらいの時間をこれから一緒に過ごしてくれたら。

 いつか、この一途な恋を振り返ってこんなこともあったね、って笑えるように。その先はずっと隣に先生がいてくれるように――

「分かりました、裕章、さん」

 気恥ずかしくなりながら精一杯応えると、先生は優しく笑ってご褒美のキスをくれたのだった。


fin.
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