御曹司は身代わり秘書を溺愛しています




私、葉山理咲は今年大学を卒業したばかりの二十三歳。
今日は父の会社に勤める康弘さんと、取引先の社長令嬢の披露宴に出席している。


取引先といっても、新婦の父親が社長を努める光本製薬(みつもとせいやく)は全国に名をはせる有名企業で、うちとは比べ物にならない大企業だ。

父が祖父から受け継いだ葉山化学工業は地元では少しは名が通る企業だが、光本製薬とは会社の規模がまるで違う。

それなのに、披露宴に招待されるまでのつながりが持てているのは、何年か前から父の行ってきた研究を光本製薬に業務提携という形でサポートしてもらっているからだ。

今日はその光本製薬の末のお嬢さんの披露宴。本来なら私の両親が出席すべきものだが、研究者の気質からか父はこういった華やかな場所が苦手だ。

結果、研究においても経営においても絶大な信頼を置いている、文字通り父の右腕である康弘さんに、面倒な役目を押し付けてしまったというわけだ。



「あのドレス、まるで舞台衣装だな。まぁ彼女たちの場合、この披露宴自体が企業イメージの為に演出されたショーみたいなものだから、あれはあれで正解なのかな」



スポットライトを浴びてテーブルをまわる新郎新婦を見つめながら、口元にかすかな微笑みを湛えた康弘さんが耳元でささやいた。

すぐそばにある瞳が甘く細められて、無意識に頬が赤くなってしまう。




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