あなたの願いを叶えましょう
結局、カツ丼大盛りを平らげて、黒澤波瑠と店を出る。

表に出ると、ふわり金木犀の香りがした。冬はもうすぐそこまで来ているようだ。

「ごちそうさまでした。美味しかった」

「隠れた名店だろ」

仕事中には見せない子どもみたいな笑顔を向けられて、私もつられて笑ってしまう。

「それで」

店を出てから数分で、あっという間に駅へと到着する。

黒澤波瑠はぴたりと足を止めてこちらへ振り向いた。

「明日は仕事だから、また今度うちに誘うよ」

そしていけしゃあしゃあと言ってのけた。

「はぁ? 」

さっきまで殊勝な態度とは一転、いつものふざけた態度に、思いっきり顰め面で聞き返す。

「なんだ?そんな残念だったか?冨樫よ。期待させて悪かったな」

黒澤波瑠の大きな手が肩に添えられると、迂闊にもドキドキする。
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