あなたの願いを叶えましょう
『それは別に構わないが…』

片瀬さんは一旦言葉を区切ったが、暫しの沈黙の後に、歯切れ悪く切り出した。

『あまり誤解を生むような行動は控えた方が賢明じゃないか。彼女は結婚していることは黒澤も解っているだろう』

鼓動が一気に激しく脈打った。

やっぱり黒澤波留と梁川さんの噂は上の人達にも伝わっているようだ。

『解っています。彼女が倒れるまで働く羽目になったのは私の責任ですから』

『それは…どういう意味だ?』

片瀬さんは遠慮がちに尋ねる。

優秀な部下からの突然のカミングアウトに、切れ者で評判の課長も動揺しているようだ。

私はドアの前でごくりと唾を飲み込む。

『彼女の夫は私の兄です』

断固とした口調で黒澤波留は言った。言いきった。

うそ……それって言っちゃっていい事?

そうしたら、黒澤波留か梁川さんのどちらかは、異動になってしまう。

私の動機は一気に加速する。
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