あなたの願いを叶えましょう
「とはいえ、今日は梁川さんを助けてくれてありがとう。感謝してる」

俯く私に言い過ぎたと思ったのか、黒澤波留はフォローの言葉をかける。

気を使わせてしまったか。

そう思うと余計に情けなくなる。

「別に…たまたまなので」

さっきまでの勢いは何処へいったのやら……私はすっかり萎縮してしまった。

そもそも梁川さんを助けようとした訳じゃない。

身体が勝手に動いたのだ。

ぶらりと立ち寄ったセレクトショップに飾ってあった商品が棚から落ちそうになって、つい手を伸ばしてキャッチするのと同じ事だ。

たまたま人間だった。

それだけのこと。

しかもキャッチできてなかったし。

「ともかく今日はごめん」

一言言い残し、ひらりと手を振って黒澤波瑠は梁川さんの元へと戻っていった。

私は一人廊下に立ち尽くす。

黒澤波瑠の心のシャッターが、ガラガラと音を立てて閉じていく音が聞こえた気がした。
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