あなたの願いを叶えましょう
一息つくと、冨樫円の真っ赤な顔をふと思い出し、それを紛らわせるよう再びビールを煽った。

ポケットからスマートフォンを取り出して、画面をジトッと見つめる。

メールしてみようかな、とも思ったけど、なんて送ったらいいかもわからない。

それに冨樫の機嫌をとってるみたいで女々しいじゃないか。

そこまで考えたら自然とでっかいため息が口から溢れた。

「ため息なんかついて。若者が」

そんな俺の様子をみてナオシが冷やかしてきた。

「もう若くねーだろ。三十だぞ」

「俺よりかは若い」

三つしか変わらないけどな。

「ナオシこそいい歳して、いつまでこんな事してるつもりだよ」

俺が言い返すと、ナオシは形の良い唇の片端をあげて、不敵な笑みを浮かべる。

「人生は長い。時には休息も必要だ。頑張り過ぎると息切れする」

それは休んでも帰れる場所があるからだろ。

グラスを磨く端正な横顔をみながら妬ましいことを心の中で思ってしまう。

ビールを一本飲みきった頃には空きっ腹に飲んだせいかほどよくアルコールが効いてきた。
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