あなたの願いを叶えましょう
三年前

何かに開眼したか、兄ナオシは某一流外資系証券会社を誰にも相談することなく退職し、突如単身タイへ自分探しの旅へ出かけた。

超優秀だった長男の無謀な奇行により、黒澤家に激震が走った。

母親はショックのあまり数日間寝込んだほどだ。

父親は正気の沙汰ではないと、激昂。

一方、妻である清美さんも寝耳に水の出来ごとだったはずなのに、動じることはナッシング。

もっとも清美さん本人としては、丁度そのころ大型案件を抱え仕事が忙しかった。

そのため、旦那はバックパッカ―でタイへ旅行いった、くらいの感覚だったそうだ。

そんな事情を知らなかった父親は、馬鹿息子の帰りを騒ぎ立てずにじっと待っていた清水さんを、芯のある一途な女性だと思ってしまったらい。

鈍感力がすこぶる強いだけなんだけどね。

一生自分が護っていくと誓って、俺にもそれを強要してきた。

あの可憐な外見がより一層父の庇護欲をそそったに違いない。

シスコンとも思えるほど、俺が清水さんに過保護なのも厳しい父親の言いつけがあってのことだ。
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