あなたの願いを叶えましょう
そして何より、清美さんがナオシと結婚したのは、自分が二人を引き合わせたせいではないか、という気持ちがどこかしら拭えないでいる。

とんかつ屋で、あの日二人が出会わなければ、きっと可憐な清美さんはもっとまともな男と結婚して、幸せに暮らしていたに違いない。

実際、社内でのお誘いは引く手数多だった。

そのうち清美さんそっくりなカワイイ子どもが出来て、夫と二人協力しながらワーキングマザーとしてバリバリ頑張ってる姿が容易に創造出来る。

しかしナオシと結婚した今、こんな状況では子どもすら望めないだろう。

育児休暇なんて、とても取れる状況じゃない。

俺はぐるりと店内を見渡す。

ボロい…ボロいな……。そして俺の他に客の姿は見当たらず流行っている、とは言い難い。

儲かっていても、そうでなくても、家賃や光熱費、そして諸々の経費がかかるだろう。

ナオシがエリートサラリーマン時代に蓄えた貯蓄を食いつぶしながら、なんとか経営している状況だ。
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