あなたの願いを叶えましょう
病院のエントランス前

「倒れるまで嫁を働かせて、どういうつもりだよ!」

何も言わないナオシの襟首をつかみ、俺は食ってかかる。

「護る覚悟がないなら、とっとと離婚してやれよ!」

「それはダメ!!」

背後から、突如女性の声がカットインしてきた。

驚いて振り向くと、青い顔をした清美さんが立っていた。

真っ白な顔に、痛々しいほど細い身体。

なんだよ……やっぱボロボロじゃんか。

一緒に営業に回っていたころの彼女は、もっと溌剌とし、輝いていた。

しかし、未だにその瞳にはやっぱり強い意志の光が宿っている。

「ナオシ、赤ちゃんが出来たよ。私たちの赤ちゃん」

衝撃的な告白だった。

ナオシの襟首を掴んでいた手から一気に力が抜けていく。

「赤ちゃんて……」

そう呟いてナオシは言葉をなくしている。

おいおいおい、なに他人事みたいなリアクションしているんだよ、と思っていても口出しできる雰囲気ではない。
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