あなたの願いを叶えましょう
「最後は両手でスローパーを掴まないとゴールにならないからね!」

「無理!絶対無理!」

両手を広げべたりと壁にひっついたまま叫ぶ。

「無理じゃない!とっとと手ェ離せ!」

右手をスローパーから離すと事なんて出来ない。

怖い!無理!!

「頑張れ!」「もうちょっと!」

下で見ていた見知らぬ人からも声援が飛んでくる。

左足を斜め上のスローパーに乗っけて、最後の力を振り絞り左手でグイッと身体を持ち上げる。

右手を伸ばして最後のスローパーに飛びついた。

「や…やったあ!」

私は両手でスローパーを掴みブラリと宙にぶら下がる。

下からパラパラ拍手が聞こえた。

優奈の方に視線を向けると、親指をグッと立ててニカっと小学生みたいに笑った。

苦しみから解き放たれた開放感と達成感で気分がやけに高揚する。

なんだぁ、私も頑張ればできるじゃん。


「冨樫さん?」

突然名前を呼ばれ反射的に振り向く。

下からこちらを見上げている男性には見覚えがある。

「どうも…お疲れ様です…工藤さん」

私はスローパーにぶら下がったままビジネスライクな挨拶をした。
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